近年、日本における大学などの高等教育機関では、「国際文化」の名を冠する学部・学科・研究科・コースなどが多く設立されています。
これは、二十世紀末から二十一世紀初頭にかけて進行しつつある情報・交通網の普及による急速なグローバル化の流れに対処していくことが、
現在の日本の大学などの研究・教育の場において、切実な問題となってきていることを反映したものに他なりません。
研究の面では、民族・宗教問題や移民など人の交流によって起こる摩擦、そして最近の情報革命によって異文化が個人の日常生活の中に直接入り込んでくる現象など、従来の専門領域ではとらえきれなかったような情況に対応するために、学際的な取り組みがますます必要になってきています。
それとともに、そのような流れの中で、国際社会に貢献しうる人材となることが期待される学生たちが、多文化共存の理念と実践方法をどのように学んでいくかという教育の問題も、私たちが日々直面しているところです。
もとより、研究・教育に携わる教員の側にも、学生の側にも、着実に国籍や文化の面での多様化が進行してきています。
「国際文化」という名称は、こうした日本の大学がおかれている、さまざまな面での国際化という大きな潮流に対応するための役割を担うものであると考えられます。
従来、こうした国際社会の変化と、それへの対応についての研究と教育は、
それぞれの大学などにおいて独自の取り組みがなされてきたと考えられます。
そのようなさまざまな試みの中で生まれてきた方法論や課題について、意見交換とディスカッションを行う場として、
この度、私たちは「日本国際文化学会」の設立を提唱したいと考えました。
国際文化学という言葉そのものは、かならずしも一つの学問的分野として定着してはおりませんが、
現在では、大学の学部・学科単位の名称として多く用いられているだけでなく、
急速な国際化の中での文化現象の研究・教育のあり方を考える枠組みとして、さまざまな分野でその必要性が認識されつつあるものです。
そのような学際的な研究・教育のための議論の受け皿として、こうした学会を設立することに広くご賛同が得られれば幸甚であります。